時は残酷に 流れ逝く  





  第拾弐幕  
















  唯 時は廻る 懐かしさも滲んで



  この心までも 細やかに煌めく    















  「やっぱり一志、鬼だったんだ、、、」











  女雅が、分かっていた様な口を利いていたため

  三人は少し女雅を睨みつけた。











  「でも、心は人間だよね」







  「すごく、優しい人だよ」











  真が言った後、楓弥も続いて言った。















  一志が泣き止んだ後、泣き疲れた一志を寝かせ

  俺は皆に全てを話した。



  皆は恐れる様子も無く、俺と同じように



  一志を信じてくれていた。



  きっと、皆も俺と同じ事を思ったんだろう。



  



  それ以前に、何故か女雅だけは

  一志が男だと聞いて、一番にショックを受けている様だった。



  楓弥と真は、薄々気付いていたらしいけど。







  一志が、俺等の事を大切と思っていてくれているのと同じ様に

  俺等もまた、一志がすごく大切な仲間で。



  そのまま、一志が起きてしまったら

  一志は自分を責め続けてしまうかもしれない。



  そんな事はして欲しくない。

  だから、俺は今から皆といっしょに



  一志の元へ行き、傍に居てあげることを思って。















  「一志が起きたら、笑ってあげよう」















  仲間を共に、迎えに行こう。







  そう思った四人は、今居る部屋を後にし

  一志が居る部屋へと向かった。















  いくら一志が、鬼であっても



  俺らで、人間にしてあげるんだ。







  もう、鬼の情などに苦しめられぬ様に



  安心して、居られる様に











  何があっても、仲間を信じよう。











  それが、四人の一つの志。



  一志にも、教えてあげなきゃね。







  俺らはもう、仲間なんだから。















  五人の志が一つになった時











  深紅の桜は、舞い散り始める。



































  同時刻、京内は匆々と騒ぎ

  慌てふためいていた。



  何人もの屋敷兵が、屋敷中を駆け回り

  その中の一人が、帝の部屋へ飛び込んできた。











  「帝!あの四人が、未だ戻って来ておりませぬ!」







  「ちっ、女雅め。今宵も何をしているぞ」















  女雅の父でもある帝は

  四人の帰りが遅い事に、腹を立てていた。







  暗雲から落ちる落雷が



  京中に、響き渡る。











  「まさか、、、」











  四人共、鬼に喰われたのかも知れない。



  不吉な天候にも見舞われて



  帝は、血迷った決断をしてしまった。











  運命を変える時はまた、廻り始めた。  















  「ええい!兵を出せ!」







  「しかし、御息子様が、、、」







  「女雅などの出来損ないなど、もう要らぬは!



  今すぐ鬼を退治に参れ!」















  帝は、女雅が喰われたと思い

  新たに兵を出す様に下した。







  女雅が生きていたとしても、他の三人が生きていても

  どっちにしろ、役立たずにしかならないだろうと決め



  その四人も、見つけ次第殺せと言った。











  「承知」















  帝の決断により、今また鬼退治の命が出た。



  京屋敷兵が、何人も出兵した。







  これだけの者が居れば、鬼など敵ではない。



  帝は、雷の爆音と共に、大声で笑った。







  今に見ておれ、京の力をと



  言わんばかりに。



















  夕暮の逢魔ヶ刻に、暗雲発ち籠める。



  其の物などは、これから起こる悲劇を







  知らせる為の、物なのか。  















  斑雲はやがて、大豪雨となり



  運命と云う名の天変地異を、齎すであろう。




















  現世は闇に迷いて










  幽世は霧が晴れる
  











 

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