伍は 一つに  





  第拾参幕  一志
















  雷が鳴り、暗雲発ち籠める中

  激しい雨の音で、一志は目を覚ました。







  目を開けたら、目の前にあの四人がいて

  俺の顔を、覗きこむ様にして見下ろしていた。



  今の顔は、見られたくない。



  きっと、泪と歪みで、ぐちゃぐちゃだ。















  「一志、、、」















  皆の、悲しそうな表情からに



  あの事が、全て伝わってしまったのだろう。











  すべてを、泪として吐き出した俺の身体は



  少しだけ、軽くなった気がして。







  俺は一先ず、上半身だけを起こした。



  白水が着せてくれたのか

  肩に、羽織が掛かっていた。











  皆からの言葉が、聞きたくなくって



  勝手に口が、動いていた。



  俺は、消え入りそうな声で、言葉を発した。















  「みんな、、、俺、、、」  















  顔を伏せ、顔の横と前髪が顔にかかり

  周りからは、表情を読めない様にした。



  今更、顔なんて合わせられない。















  「全部、白水から聞いたよ」







  「でも、大丈夫」















  真が言葉を発し、優しく一志の肩に手を置いた。







  真の行動に驚いて、一志は肩をビクンと跳ねらせた。







  それを見た三人は、一志を安心させる為だろうか。



  優しい言の葉を、一志に対して云っていった。











  「何があったって、一志は一志だから」







  「鬼とかなんて、関係ないよ」







  「みんなで信じようって、決めたから」















  「それが、俺等の一志だから」



















  女雅の、最後の言葉で悟った。







  俺が鬼でも、自分達を裏切った奴でも







  信じてくれている。



  他の誰でもなく、この、俺を。











  ずっと、不安だった事が無くなって



  さっき、泣いたばかりなのに



  唯、止まらんばかりの泪だけがまた溢れてきて



  思わず顔を手で覆い、泣き続けた。











  もう、何も望まない。



  他に、何を望めと言うのか。















  「あらら、一志また泣いちゃった」











  楓弥は苦笑しながらも、暖かな言葉を口にして。











  「ご、御免ね一志!そんなつもりで言ったんじゃ、、、」















  女雅が、自分を心配して慌てている。



  



  心が、和む。















  「ごめんな、みんな、、、」















  その言葉から、四人は一志を唯見つめ



  目を細めた。











  「本当、ごめん、、、ごめんな、、、」















  幾ら謝っても、謝りきれずにいた。



  謝って済む問題じゃないことくら、分かっている筈なのに



  自分には、唯謝罪の言葉を口にすることしか出来なかった。







  唇を、噛み締める。悔しい。



















  「一志は泣き虫だなー」















  そう聞こえた時



  手に、微かな温もりを感じた。







  全員で、手を握っている事が、後から分かって。











  「俺等、仲間だろ」







  「これからも、ずっと」















  白水に泣き虫と言われたので、滲む泪を必死に堪えて

  もう泣く事を止めた。



  目をゆっくりと綴じて、皆の暖かさに心を通わせた。



  そしたら、皆と一つになれた気がして。







  とても、安心が出来た。



  みんなから、暖かさを貰った。











  これで俺も、皆と同じ志を



  持てる事を、皆から教わり



  その志を、持てる事が出来た。











  五人の志が、一つになった。























  その瞬間、まるで五人を裂く様にして

  雷の大きな音が、響き渡った。



  白水が、ポツリと呟いた。















  「何か、嫌な感じがする」















  白水の言った事は、確かな物であり



  五人を裂く新たな鬼は、もう既に近くまで来ていた。







  雷と共に、押し寄せて。















  俺は、心で誓った。







  これからを、共に生きよう。



  離れる事無く、ずっと傍に。



  皆は、何があろうとも、俺が守る。











  そして心に







  誓いを、灯した。










  深紅の桜の花弁は  もう半分も無かった
  











 

[PR]動画