今 終を告げる





  第弐拾壱幕  終焉
















  あれから、数年程経った。















  あの後







  帝は他に、京を移し



  この辺りは、静かになった。















  あっきーも、今はもうすっかり良くなり







  元気で、皆で暮したあの屋敷に



  住む事にしたんだ。































  その屋敷御殿は、あのまま残っていたけれど







  庭の桜が全て、跡形も無く消えていた。



















  唯一、残っていた物は



















  満開に咲く、深紅の桜。















































  俺は、桜の近くへと向かい







  麗しく咲く桜の樹を、見上げた。















  木洩れ日が眩しく、つい目を細めてしまう。































  初めは、一枚の花弁も無く







  枯れ朽ちていた、桜だったけど



















  あれから、まるで一志のように咲き誇り







  俺等をずっと、枯れる事無く見守っている。



























  この桜の処に来れば







  一志がすぐ近くに、居るような気がするから











  そっと幹を撫でて、寄り添うんだ。







































  「女雅らんは、一志の事が好きだったんだね」







































  うん、そうだよ。







  俺は今でも、一志が好きだよ。















  けど、皆も一緒だね。







  皆、一志の事は、大好きだ。















  一志の全てが、好きだったんだ。























  その、鈴の音のような聲も







  臼紅色の、長い髪も







  桜に、呼び掛ける姿も。















  全部、大好きだ。















  一人の仲間として







  同じ志を、持つ者として。



































  俺等は、忘れないよ。







  絶対に、忘れる事なんてないから。















  だから一志も







  忘れないでね、俺等の事。























  これからもずっと











  この桜になって、見守っていてね。



























  そうすれば、一志が言ったように







  必ずまた、出会えるから。











  俺等が離れる事なんて、絶対にないよ。































  生まれ変わって







  今度こそは、ずっと一緒に居ようね。







  人間として、一緒に暮そう。















































  短い時だったけど







  一生忘れる事のない、愁な記憶。















  次逢ったら







  話したい事やしたい事が、沢山あるんだ。























  約束、守れなくてごめんね。











  いつかきっと







  外へ沢山、遊びに行こうな。











































































  気が付けば隣には















  楓弥も、真も、白水も居て











  



  皆で、桜を見上げて







  優しく、寄り添っていた。



























  そして、目の前の一志へ















  そっと、呟いた。



































































  「桜が、綺麗だよ」



































































  そう言って















  桜仕舞いし世の中で



































  目を綴じた。





















































































































  唯今は廻り行くこの日々を数え 暖かな胸に抱いて



  唯今は悲しみも刹なさも哀れみも憎しみも 全てを棄てて












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