昊見上げ 瞳に映す





  第弐拾弐幕  現世
















  色褪せた想い出さえ 捨てられぬまま



  泣いている私が居る  



























  陽が上り、青空を架ける。











  そんな中

  俺は顔に何かが当たっていると気付き、目を覚ました。







  横を見てみれば、息子の犬のグッチが

  只管俺の顔を舐めていた。











  「、、、こら、やめろ」











  グッチに叱りつつ、体を起こした。







  舐められた顔を拭こうと、頬に手を当てた時







  



  



  何故か、頬が濡れている。



  視界が、ぼやけていた。











  俺は、その現象がすぐに分かった。























  「何で、泣いてるかな、、、」















  







  不思議に思った一志でも



  唯一つだけ、思い当たる事は在った。































  先程まで、見ていた夢。



















  とても儚く、哀しかった気がする。































  夢な筈なのに







  実際、在った気がするんだ。























  何千年も、前に。











































  でもそれは、夢である訳で















  実際在るなんて、ありえないと思った。























































  しばらくして、泪を拭い



  時計を見れば、かなり遅刻している事に気付いた。







  確か集合は早めと言われていたが

  明らかにもう昼の時刻で。



  考えるだけで、溜息が出た。































  また、白水に怒られて







  楓弥に、励まされて







  真に、呆れられる。















  でも、いつも俺と同じように遅く来る



  女雅らんが居るから







  結局皆に怒られるのは、女雅らんだ。















































  布団から出て、舐められた顔を洗いに行こうと

  洗面所に向かう。



























  今日もまた、いつもと変わりない一日で







  いつもどうり仕事へ行き、ボイトレをして







  皆と話して、家に帰り、息子の散歩。



































  バンドを組んで、皆を初めて見た時も







  何だか初めて逢った気がしなかったのも、覚えてる。



















  和が好きだから、そんなバンドを創りたくて







  今まで、皆で頑張ってきた。























  だから、今此処に、この世に







  俺が居て、皆が居て















  そして、Kagrra,が在る。



  



















































  顔を洗い終わり、身支度をして

  息子達に食事を済ませ、家を出た。















  何だか、陽の光が身体に染み渡ってきて



  思い切り、背伸びをした。















































  きっと、皆に逢う事は















  偶然じゃなく、必然だったんだ。







  必ず、逢う事になっていたんだね。



































  これからも、ずっと一緒に居よう。







  もう、離れる事なんて無いように。



























  



























  そう想い、昊を見上げる。















  今は春だから、近くの公園から舞って来る桜が



  視界に、入って来ていた。







  その中で



















  何処か、深紅の色に近い花弁が見えたのは







  気のせいだろうか。











































  ふと、前。







  ツアーライヴのMCの時に



  自分が言った言葉を、思い出した。



























  今更になって、自分が言った言葉の意味が







  ちゃんと、理解ったような気がした。















  あの夢を見て、理解できた。























  だから俺は、自分自身で誓いを起てていたんだ。











































  この昊に











































  そして、あの桜に、、、





































































































































  「今決めました。生まれ変わっても

  オレはKagrra,を創っていきます───」




















現世物語 ここに終焉















[PR]動画