鈴音は 遠く 近く





  第参幕  鈴の音
















  「でもそれって、唯の噂じゃない?実際喰べられた人っているの?」







  京の夜道を歩いている

  四つの人影。



  てっきり噂だって事を忘れていた三人は

  真から発せられた一言で悩んだ。







  「あまり詳しくは知らないんだけど、森へ行った人達は誰一人として戻って来ていないらしいし

  噂に出てくる鈴の音を聞いたって説も入ってるよ」







  白水の言葉を聞いた三人は、ぞっと背筋を凍らせた。







  真相は未だ掴めずに



  四人は帝屋敷を抜け



  鬼が現れるという深い森へと



  進んでいた。







  それぞれが皆刃を持ち

  兵と化して、紅い月光なる道を歩く。



















  森へ入っていくと、たった一本だけ道が架かっていたが

  それは森の奥深くへと続き、目を凝らしても先が見えなかった。

  その道も、辺りが草木で囲われているせいか

  ほぼ道の役目を果たしてはいなかった。



  不気味な雰囲気に惑わされながらも

  四人は唯前へ前へと進んでいくばかりだった。







  「なんか、、、噂どうりすぎて怖いね」







  真も多少怖がっている様子だったが

  大げさな素振りは見せず、冷静を保っている。







  「早く終わらせて、帰って寝たいなー」







  「女雅らん、思ってることはみんな同じだよ」







  女雅の我儘に、白水が呆れた様な口振りで言葉を放った。

  その言葉に、女雅は頬を膨らませて駄々こねている。



  そんな女雅も、怖いものは怖いらしく

  頬を膨らませた後に、なんだか不安そうに辺りを見回していた。



  それに気付いた楓弥が、女雅に向かってからかうように言った。







  「そのうち、鈴の音が聞こえてきたりして」







  それを聞いた女雅は、さらにまた身を震わせ

  体を両手で抱え込み、顔を強張らせながら楓弥に怒鳴りつけた。







  「もー!変な事言わないでよあき、、、、、、、、、、」







  さっきまで大声で怒鳴っていた女雅が突然、何も言わなくなったので

  白水と、楓弥と、真は同時に女雅の方を向いた。



  女雅は、元から大きな目をさらに広げて

  何かに驚きを隠せないようだった。



  さらにまた、半開きだった口がガタガタと震えだし

  何かに脅えているような顔つきになっていった。







  初めは、なんで女雅が震えていたり、大人しくなったのだろうと思っていた。



  よくよく、耳を澄ませてみれば



  女雅が怖がっている理由が、分かってきた。







  ほんの冗談のつもりだった楓弥は、我の耳を疑った。

























  しゃらん



















  「白水、真、聞こえた?」







  「うん、、、」







  「聞こえたよ」



















  しゃらん



















  「空耳、、、じゃあないよね」







  四人にも聞こえる 確かな音











  鈴の音



















  しゃららん



















  「近づいて、来る、、、」



















  初めは、遠くから聞こえていたはずの小さな音が







  だんだんと大きくなっていき







  こちらに近づいて来るのが分かった。











  全員、背から冷や汗がいっきに吹き出し、息を呑んだ。



  背筋が凍りつく様な邪気が、辺りに漂う。



  息が、出来なくなりそうだった。



















  なんとか意識を保ち



  四人とも、携えていた刃を鞘から抜き出し



  音のする方へと、構える。











  しゃらん







  しゃらん







  しゃららん












  音は絶えず



  先程よりもさらに大きくなってきていて



  もう近くだって事が、すぐに分かった。







  もう、逃れられない。



  刃を握る手が震え、手汗で滑る。







  これが怪 これが 鬼







  四人がそう思い、神経を音に集中させ



  先程より、刃を握る手に力を籠める。











  しかし、もう怪の気配が目前だという時に









  鈴の音が、急に止んだ。









  何かと思い、ふと顔を上げれば











  目の前には 一つの人影
  











  

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